生存はすべてに優先します。逃げていいし休んでいいのです。
『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』借金玉 KADOKAWA
努力なんてものは、やりたいときにやるべき環境が整っていたらやればいいことです。
今回は借金玉の『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』を紹介する。
ちなみに、借金玉はれっきとした著者名だ。
借金玉の略歴について触れると、本のタイトルにあるとおり、ADHDの診断を受けた当事者である。
早稲田大学在学中に診断を受け、その後は金融機関に就職するも失敗続きで2年とたたずに退職。
その後は起業して一時的に成功を収めるも、最終的には事業は失敗し、多額の借金を背負って無職に。
著者名の由来はここから。
僕は大学生のころ、この本を読んで大いに救われた。
本の対象者としては、発達障害をはじめとして、生きづらさを抱える人すべてに向けられている。
人生はうまくいかないけど、なんとかやっていこうというスタンスだ。
仕事術というタイトルだけど、それ以外にも生活習慣を整える秘訣など、著者が編み出したライフハックが幅広く紹介されている。
さて、あなたは今週、きちんと休めた日はあっただろうか?
自分はもっと頑張らなければと、人よりできないからと、自分を追い詰めるようになにかに取り組んでいないだろうか。
自分の不出来に自覚的な人ほど、自分が許せなくなる。
休むなんて、考えられないという。
その感覚はとてもよくわかる。
たぶん、僕らはずっと自分の出来に満足することなんかない。
とはいえ、エンジンを踏み続けることはできない。
僕たちはそれぞれ自分にあった休み方を覚える必要がある。
(そうしないとどうなるかは、なんとなくわかると思う)
『発達障害の僕が』はADHD当事者だけでなく、幅広い読者を支えるだけの度量がある1冊だ。
今回はこの本から、どうやって休むのかという話をしていく。
休日の過ごし方で自分の状態を把握する
うつを経験した借金玉曰く、休日の過ごし方は大きな指標になるという。
休日、あなたは、あなたらしい休日を過ごせているだろうか。
できているという人は大丈夫だ。
問題はあなただ。
掃除や洗濯、買い物とやるべきことに追われ、それなのになにもできずに焦燥感に焼かれて時間ばかりが過ぎているという場合、対策を考えたほうがいい。
こうした日々が続けば、心は疲弊してしまう。
なにもできない自分に焦り、なにかしようとしている人もいるかもしれない。
SNSでは多くのやるべきことが羅列され、あなたに行動を強いてくる。
それは仕事の勉強をすることだったり、ジムで体を鍛えることかもしれない。
でもそうした焦燥感のなかで無理やり取り組もうとしても、うまくいくことは少ない。
あなたがすべきは、「なにもしない」ことだ。
自分の時間を過ごし、リラックスすることが、どん底に陥ることを引き留めてくれる。
リラックスできる方法をいくつか持つ
とかく、焦ってなにかをすると碌なことにならない。
まず、焦ると視野が狭くなる。
視野が狭まれば、失敗することが増える。
狭まった視野は失敗ばかりにフォーカスする。
また焦る。
永久機関の完成である。
そのループを断ち切るには、自分がリラックスすることを意識的に選んでみることだ。
とはいえリラックスといわれ、なにをしたらいいのかという問題がある。
同書でおすすめされているのが、五感を楽しませるというもの。
- リラックス用のソファを置く。
- シーシャ
- お香
- 入浴
- 日光浴
上記が本では紹介されていた。
いずれも五感を使うものだし、気力体力がなくてもできそうなものだ。
頭は動かないし、やる気も出ない。
そんなときでもできることを、人生のなかで少しずつストックしていく。
それだけで、人生の難易度をいくばくか下げることができる。
なお、リラックスしようとするときに注意事項がある。
それは、読書や映画鑑賞、運動などを無理に行わないでほしいということだ。
楽しめていればいいのだが、そうでないときは待ってほしい。
無理に行うことで、逆効果になっている可能性が高い。
アニメを見ていても内容が頭に入ってこなければ、前述のように頭を使わずにできることをやってみたほうがいい。
ただ頭を使わないといっても、インターネットで大量の情報を摂取すること、ギャンブルなどに手を出すことは推奨されていない。
ネットは脳を疲れ切らせるだけだし、ギャンブルは回復への効果がないわりに依存性が強すぎるとのと。
確かに、個人的な傾向かもしれないけど、疲れているときにネットをすると、自分にとってネガティブな情報ばかり集めてしまう気がする。
落ち込むだけなので、元気がないときは早く寝てしまうようにしている。
一度寝て起きると気分がマシになっていることが多いので、おすすめだ。
なにもしない環境を整える
なにもしない。
言葉にすることは簡単でも、実行に移そうとするとなかなか難しい。
そもそも、なにもしていないことに焦って苦しんでいるのだ。
そんな僕たちが「さあ、なにもしなくていいですよ」といわれたって、どうしたらいいのかわからないことだろう。
なので、環境を変えてみるのがいいと思う。
借金玉はやばいとき、なけなしの金を使ってタイの離島にいったらしい。
目的はただただなにもしないこと。
南国は旅行者に寛容で、そこにいる人たちはいい加減で雑。
なにもしない人ばかりの環境が、「なにもしない」ためには最適だそうだ。
もちろん、普通に働いている人が気軽にタイに行くことはできないだろうからと、ビジネスホテルに籠る「外こもり」も提唱している。
海外に行く代わりにビジネスホテルで徹底的にだらけるというもので、こちらは実行のハードルが下がっている。
自宅だったり、日常の延長にいるとどうしても、完全に心を休めることは難しいだろう。
普段の土地を離れて、見知らぬ場所に行ってみるとリラックスしやすいと思う。
なにもできていない自分を、それでも肯定する
焦る気持ちはよくわかる。
でも焦っているときほど、ゆっくりと深呼吸してみてほしい。
あなたは、休日を楽しめているだろうか。
もし焦りばかりが募っているのなら、一度なにもしないことを自分に許してほしい。
五感を塞いで過ごしてみて、それでもだめなら、どこかへ行ってみる。
自分が退屈を感じるまで、エネルギーがたまるまでゆったり過ごすこともありだと思う。
もちろん、そんな悠長なことをしている暇はないという場合があることもわかる。
甘えたことをいっているといわれても仕方ない。
世界は厳しいから、そんなふうに過ごすことを認めてくれないだろう。
でもだからといって、がむしゃらに頑張って動けなくなっては意味がない。
居場所がもともとないのなら、気にすることなく休んでもいい。
自分でなにもかもを諦める前に、一度休憩の時間を取ることもありだと、僕は思う。
僕の考えとして、どうせだめならとことんまでやってみるのがいい。
最後は必ず死ぬし、それなら人目を気にせずやりたいようにやってみたい。
どうかよくわからない世間体みたいなものを前にして苦しんでいるのなら、一度休む時間をつくってほしい。
生きていることは無条件で肯定されるし、逃げることはベストではなくともベターである。
そういってくれたこの本を、余裕があるときに読んでみてほしい。
きっと、心が少し軽くなるはずだ。
参考文献
『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』借金玉 KADOKAWA 2018年