コトバはもともと相手に届けるために作られたもの。どれだけ正しくても、届かなければ意味を果たしません。
『伝え方が9割』佐々木圭一 ダイヤモンド社
女性をデートに誘うとき、次の2つ、どちらが相手の心に刺さるだろう。
- デートしてください
- 驚くほど旨いパスタの店があるのだけど、行かない?
もちろん、これは相手がパスタ好きだという前提の話だ。
人にもよるが、後者のほうが応じやすい気がする。
これは佐々木圭一の『伝え方が9割』で紹介されていた、伝え方の技術の例だ。
表現ひとつで、求める結果になることもあれば、期待外れになることもある。
ここで大事なのが、優れた表現にはルールがあるということだ。
この記事では、『伝え方は9割』をもとに、どのように頼めば相手が受けてくれやすいのかを紹介する。
独りよがりをやめろ。相手の立場に立て
先のお誘いの例でいうと、前者は自分の要求をストレートに突きつける形だった。
対して後者は、相手にはおいしいパスタというメリットを提示している。
相手も自分と同じ人間だ。
なにかしらのメリットがなければ、わざわざ行動する理由がない。
だからそれを提示できるかどうかが、お願いごとをするときの重要なポイントだ。
『伝え方が9割』では、ノーをイエスに変える技術として、具体的に3つのステップを提案している。
- ステップ1 自分の頭の中をそのままコトバにしない
- ステップ2 相手の頭の中を想像する
- ステップ3 相手のメリットと一致するお願いをつくる
自分の希望をストレートに伝えるのは、博打だ。
相手がたまたまやりたいと思ってくれるなにかがなければ、お願いは成立しない。
だから素直にお願いせず、我慢してステップ2、3に移る。
さあ、相手はどんなことに喜びを感じ、あなたの誘いに乗ってくれるだろうか。
相手次第ではあるが、切り口はいくらでもある。
その人となりを知り、メリットになりそうなことを考えてみよう。
なお、同書ではステップ2で役立つ切り口を7つ紹介してくれている。
以下、紹介していく。
イエスをノーに変える7つの切り口
- 相手の好きなこと
- 嫌いなこと回避
- 選択の自由
- 認められたい欲
- あなた限定
- チームワーク化
- 感謝
『伝え方が9割』で紹介されているのが、この7つだ。
同書でも、また個人的にも一番大切なのが、相手の好きなことを切り口にできるかどうかが大切だと思う。
相手の好きなことであれば、お願いされても快く聞いてくれるだろう。
なんなら、あなたに好意を抱いてくれる可能性だってある。
お願いごとをする立場になると忘れがちだが、僕たちは意外と誰かの役に立ちたいと思っているものだ。
自分を活かせるような頼みなら、喜んで引き受けてくれる人が多いと思う。
そしてそういう場を与えてくれたあなたに対して、感謝する。
これは僕自身がそういう感性を持っているからそう思うわけだけど、同じように考える人も少なくないはずだ。
相手にメリットを提示できれば、お願いごとはコミュニケーションとしていいものになる。
一方的にやってほしいことを押し付けていないか、相手のメリットになることはあるか。
お願いをする前に、深呼吸する時間をつくってほしい。
逆にお願いを受けるときについて
ここからは本の内容を、少し脱線する。
コトバの使い方を工夫し、勉強することであなたの人生はやりやすいものになる。
では逆に、お願いされるときはどうだろう。
相手も同じような勉強をして、あなたにメリットのあるお願いをしてきたとする。
あなたはきっと、受けることだろう。
持ちつ持たれつで、いい人間関係を作ることができる。
でも問題は、あなたがいい人で、ついお願いを過剰に受けてしまう場合だ。
僕たちには人の役に立ちたい、という欲望があるといったけど、それが強すぎると誰かの期待を満たしてばかりの人生になってしまうかもしれない。
自分の人生をきちんと歩めているかどうか。
自分のやりたいことを、やれているかどうか。
そのお願いごとは、いま自分がどうしても受けなくてはいけないものなのか。
人の力になるためには、まず自分に余裕が必要だと思う。
そうでなければ、最悪自分も相手も共倒れになる。
お願いを聞いたばかりに、相手といさかいを起こすのはつらすぎる。
どうか、自分のことも思いやってほしい。
人の役に立てているという実感は、ときに麻薬じみた高揚感を覚えさせる。
それ自体が特別に悪いことだとはいいたくない。
でも、自分を削ってまで誰かの期待に応えていないか、ときおり気にかけるのがいいと思う。
最初のうちはよくても、何度も繰り返し誰かのお願いを聞くことが、そのうち負担になっていることだってある。
「誰かの期待に応えることが、私の人生の喜び」
そんなふうにいう人でも、定期的に自分が無理していないか確認してほしい。
経験は気づかぬうちに自分を変化させる。
いつの間にか、自分のやりたいことが芽吹いているかもしれない。
だから相手に断られても、気にしないでほしい
冒頭と矛盾するようだけど、相手にも事情がある。
あなたに事情があるように。
精一杯、相手のメリットを考えてお願いしても、断られることだってある。
でもそこでショックを受けすぎたり、あまつさえ相手を逆恨みしたりするのは禍根を残す。
それはあなたと相手のためにも、まったくよくない。
持ちつ持たれつで、お互いを助け合える人間関係を築きたいと思わないだろうか。
『伝え方が9割』では、今回紹介したお願いごとの手法以外に、心を動かすコトバの使い方も解説している。
僕たちは普段、メールやスピーチなどでコトバを使っている。
オバマの演説や、駅で見かけるポスターのキャッチコピーなど、魅力的なコトバはどのように生み出されているのか。
コピーライターである佐々木が、プロの目線でひも解いていて非常に面白かった。
ぜひ手に取って読んでみてほしい。
参考文献
『伝え方が9割』佐々木圭一 ダイヤモンド社 2013年