今しかできないことに金を使う。
『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』ビル・パーキンス ダイヤモンド社
アリとキリギリスの有名な寓話がある。
いま苦労をして備えることが、将来の自分のためになるという話だ。
僕たちも、多かれ少なかれ同じような話を聞いて育っているのではなかろうか。
学生時代は将来のために勉強すべきだといわれ、働き出してからは将来のために節約して貯金をすべきだといわれる。
漫画のカイジでも、ハンチョウの有名な言葉で「今日だけを頑張った者にのみ、明日が来る」というような意味のものがあった。
いま頑張ること、それ自体は大切なことだ。
苦しい思いをして頑張ることが、現代ではある程度の成功につながることは間違いない。
でもそうやって頑張ってすえに、僕たちはいつ遊ぶのだろう?
いつキリギリスになればいいのだろう?
将来の自分や家族のために我慢し続け、やがて年老いたときにようやく自らを開放すればいいのだろうか。
体調に不安を抱え、食も楽しめなくなっている可能性もあるというのに?
結論として、若いうちは経験にお金を使うべきだ。
半年から1年ほどの生活防衛資金を貯めることができたなら、どんどん自分の関心があることにお金を使おう
この記事では、ビル・パーキンスの『DIE WITH ZERO』をもとに、どのようにお金を使えば幸福度を高められるか、考えていきたい。
僕たちはもっと、いつお金を使うのかを真剣に考えるべきだと思う。
旅行は若いうちにいくべき
まずお金を使ったときの幸福度を考える。
例えば、旅行。
海外旅行にいくことを考えたとき、20歳でいくかのと65歳でいくのとで、どちらがより楽しめるだろうか。
間違いなく、20歳のときだと思う。
楽しむために最も大切なのは、健康であることだ。
そして健康とは、年を重ねるごとに間違いなく悪化していく。
攻殻機動隊よろしく、人間の体が老化を克服でもしない限り、何人たりとも抗えない。
そしてこれは、旅行に限った話ではない。
いまやるか、将来やるか。
その体験をもっとも楽しめるタイミングで体験できれば、それが一番いい。
例えば、読書や近所の散歩などは、年を取ってからでも満足できる可能性が高い。
かたや旅行やスポーツなどは、若いときのほうが充実した時間を過ごせると思う。
お金はあとで稼ぐことができるが、若いいまはいましかない。
ありきたりだけど、まさにその通りだ。
いましかできないこと、経験をすることが人生の幸福につながる。
経験の多さ=人生の幸福度
人生最後のときを想像してほしい。
あなたはきっと、病院のベッドに横になっていると思う。
場合によっては、食事や排せつも自力ではできず、いくつかの管が体に刺さっているかもしれない。
そうなると、お金をいくら持っていてもなんの意味もない。
食事、買い物、旅行。
いまさらそんなものにお金を使ったところで、楽しむことができないからだ。
でも、経験してきたこと、思い出は別だ。
むしろ寝たきりになってから、思い出の価値は増す。
これを読んでいるあなたは、いま何才だろうか。
20才だろうか。30才だろうか。それとももっと年上だろうか。
あなたが何才であっても、思い出せばいい気分になる思い出の一つくらい、あるんじゃないだろうか。
その思い出は、振り返るたびに若かったときの感情までを思い出させてくれるものだと思う。
もはや動けなくなったとしても、体験があれば当時の感動を追体験できる。
若いうちに多くの経験をすることは、わずかばかりの貯金をするより有意義なものだと思えないだろうか。
あなたがすべきは、昼食をコンビニの菓子パンで済ませることじゃない。
まとまった休みをとり、家族や友人を誘って一緒に過ごすことだ。
健康に気をつかえ
なにかをするには、体がなによりも大切になる。
『DIE WITH ZERO』では、なにかを経験する際に必要なものを3つあげている。
- 健康
- お金
- 時間
の3つだ。
このなかでも特に、健康が重要だと同書では言及している。
これは老衰と同じだ。
寝たきりでは旅行が楽しめないのと同じく、多くの病気は人生の満足度を著しく悪化させる。
僕は風邪をひいたとき、熱がなく、咳も鼻水も出ていない状態がいかに幸せなのかを思い知った。
ただの風邪ですらそうなのだ。
年齢を重ねるごとに、健康上のリスクは大きくなる。
運動習慣を取りいれ、バランスのいい食事をとろう。
そして最低でも7時間、できれば8時間の睡眠をとる。
(……偉そうにいっているが、僕も夜更かしはするし、たまにハンバーガーを食べたりする。できる範囲でやっていこう)
アリとキリギリスの中間を目指そう
アリは頑張りすぎだし、キリギリスは頑張らなさすぎる。
中間を目指すのが一番いい。
『DIE WITH ZERO』ではタイトルのとおり、「死ぬときにすべて使い切る」ことを目指している。
死ぬときに使わずに残ったお金は、つまりそれを稼ぐだけの数年、場合によっては数十年を無駄にしたと捉える考え方を示している。
ちょっと極端かもしれないが、確かに使わなかったお金を稼いでいた若い時間を、もっと有意義に使うことができたはず、という指摘は受け止めるべきだと思う
じゃあどうやってお金を使う判断をすればいいのか。
そういうことがわかりやすく解説された1冊だ。
気になったあなたは、ぜひ手に取ってみてほしい。
参考文献
『DIE WITH ZERO』 ビル・パーキンス (訳)児島修 ダイヤモンド社 2020年